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吉田修一
2010年04月21日

37「ちょうど端数でもらったチョコレート持ってたから、『食べるか?』ってそいつらにあげたんだ。」
    

   『日曜日たち』吉田修一/講談社文庫より「日曜日のエレベーター」

作家という職業は「よく観る」職業なのですね。吉田修一の芥川賞受賞作『パーク・ライフ』などを読んでいると「観察力に恵まれない者は作家にはなれないな」とつくづく思いますね。それに、観察したものを小説的にディフォルメして再現する能力も必要なのでしょう。

「日曜日のエレベーター」の渡辺は半年ほど前に海運倉庫をクビになり、つなぎではじめた引越作業員もやめてしまって完全な失業状態になって3週間目という30歳。

洋服ダンスに変えてしまっていたマンションの小型システムキッチンを、元のキッチンに戻して、パチンコで勝ったたびにフライパンやなべ、皿やグラスに換えそろえ、ついには3合炊きの炊飯器まで買ってしまいました。

「仕事など探せば見つかる」と楽観してはいるものの、やはり不安を感じるようになっていたからです。

そんな渡辺が習慣になっている日曜深夜のゴミ捨てに10階から降りてきて思い出したのは、このゴミ捨ての習慣がつく原因となった圭子とつき合っていた日々のこと。

圭子と知り合ったのはマンションから池袋駅へ向かう途中にあったレゲエバーで、初めて交した会話が「この世で一番嫌いな場所はどこ?」「デパートの地下食品売場」という質問と答え。

圭子の答えの理由は「簡単」で「あそこにいる人たちが、みんな何か食べることを考えているのかと思うとぞっとするのよ」というものでした。

看護婦になる勉強をしていると渡辺が誤解していた圭子は実は医者の卵で、見事に国家試験に合格して見習いの医者になります。

多忙な圭子が一週間の休みが取れることになり、渡辺の予定も聞かずサンフランシスコ行のチケットを2人分買ってきます。

なぜか、圭子がこの旅行で何かに片をつけようとしていると感じた渡辺は、シャワーを浴びにいった圭子のハンドバッグからはみ出したパスポートを見てしまいます。

そして、パスポートの圭子の国籍が韓国であることを知るのです。

渡辺は別れ話を持ち出す代わりにパチンコ屋で会ったヘンな子供たちの話をはじめます。

上が小学3年生、弟が小学校に上がったばかりという年格好の兄弟はどうやら家出中の身らしく、2人ともリュックを背負い、何日も風呂に入っていないような饐(す)えた臭いをさせています。

冒頭の引用文は渡辺が2人の子供と出会った直後のもの。

予感どおりに、旅行後、それと気づかぬうちに渡辺は圭子と別れてしまうのです。


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