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食の大正・昭和史 第百三回
2010年12月10日

『食の大正・昭和史---志津さんのくらし80年---』 第百三回

                              月守 晋


●挽き割り大豆・粟

「満州」は米作地帯ではなかった。

康徳8(昭和16)年版『年刊満州』(満州新聞社)によると康徳6年の水稲の収穫量は約70万トン、陸稲の10万トンを合わせても80万トン余にすぎない。

「満州」での米の栽培は日露戦争(明治37-8年、1904-5年)後に朝鮮半島から移住した人びとが始めたものである(陸稲は古くから現地農民によって行われていたが品質の悪い米しか採れないため普及しなかった)。 「満州」で採れる主要穀物は高粱(コーリャン)、粟、トーモロコシ、小麦で康徳6年の収穫量はそれぞれ457万トン、353万トン、247万トン、94万トンほどであった。

これに当時の世界生産量の約60パーセントを占めていた大豆が同年には約400万トン収穫されている。

日本人の主食である米は輸入に頼らざるを得ず、移民人口が増加するとともに日本内地や朝鮮からの輸入量が増えた。

日本内地では1939(昭和14)年4月に「米穀配給統制法」が公布され(10月1日実施)さらに41(昭和16)年4月1日から東京・大阪・名古屋・京都・神戸・横浜の6大都市では「米穀配給通帳制」と「外食券制」が実施され自由に米を買うどころか食べたいだけの量を食べることもできなくなった。 値段も政府が定める価格で売買しなくてはならない「公定価格制」が実施されるようになった。

そうなると内地米や朝鮮米の輸入に依存していた「満州」の食糧事情も影響を受けるのは当然である。

このころ錦州市でくらしていた『少年の曠野』の著者は1941年「4月1日、生活必需物資統制令が公布された。 米の配給量は欠乏感を持つまでにはまだいたらなかったが、前年9月の日本軍の北部仏印(フランス領インドシナ=現インドネシア)進駐いらい食べさせられるようになった「仏印米」には閉口した。 白っぽい砂がたくさん混じっているのだった。 一家6人で食卓をかこんで食事をしていると、順ぐりに砂を嚙むのである」と書いている。

さらに「後年、日本が仏印の農民から大量の米を取り上げ、それがために彼の地では多数の餓死者がでたと知った。 恨みをこめた砂もあったにちがいない」とも。

志津さんは配給米を受け取ると子どもたちを集め、食卓に米をひろげて砂を除く手伝いをさせた。

ひろげた米から米粒だけを1列ずつ砂を拾い込まないように注意してお盆に移していく。 辛気くさい作業だったが、砂を噛んだときのなんとも表現のしようのない情けない気持ちを味あわないためには子どもたちも真剣に手伝うしかなかったのである。

太平洋戦争が始まるとじりじりと食糧事情は悪くなっていった。 このころには現地の「満人=中国人」の米食を禁止して満人の主食はコーリャンと定められていたがそんなことで米不足が解消するわけはなく、戦争が中期に入った42(昭和17)年ごろからは挽き割り大豆や粟が配給に混じりはじめた。

太平洋戦争の戦局が日本の敗勢にいっきに傾いた「ミッドウェー海戦」はこの年、昭和17年6月5日のことである。

志津さんの次男は小学校3年のとき(昭和17年)、日本人の間では「肉まん」ともよばれていたギョーザを36個食べて志津さん夫婦をあきれさせたという記録を作ったが、やがて外食をする機会も途絶えていった。

志津さんは子どもたちの空腹を充たすために頭を悩ませたが、量をふやすために思いついたのが溶いた小麦粉に残りのご飯を混ぜてフライパンで焼くという方法だった。 だが、せっかくの知恵も三男にはだんこ拒否されてしまったのである。


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