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食の大正・昭和史 第三十五回
2009年07月22日

『食の大正・昭和史---志津さんのくらし80年---』 第三十五回

                              月守 晋


●関東大震災(3)

臨時震災救護事務局調査による統計によれば全潰、半潰、全焼、半焼による被災世帯数は東京府、神奈川県、千葉県では次のとおりであった。


        全世帯数      全潰      半潰
 東京府   827,000  16,481  23,246
 神奈川   274,300  66,853  61,521
 千 葉   262,600  14,385   7,525

                  全焼      半焼
 東京府           310,371    758
 神奈川            65,029     19
 千 葉               449      -

以上の被災世帯数に埼玉、静岡、山梨、茨城4県のものを合算すると全世帯数2,122,900のうち約
35.8パーセント、592,264世帯が被害をこうむった(神奈川の場合は上記の被災世帯数には津波などによる流失被災が含まれている。)

関東大震災というともっとも被害をこうむったのは東京府下の住民だったと思い込みがちだが、被災世帯数の割合いは東京府で約42.4パーセント、神奈川県で約73.8パーセントであり、最大の被害をこうむったのは神奈川県民だったことがわかる。

作家尾崎一雄は大正9年、父親の死から始まる自伝的回想記『あの日この日』に被災体験を書いている(『あの日この日(一)』講談社文庫/昭和53年)。

郷里の神奈川県下曽我村の実家で、当日、朝寝をした尾崎は11時に母親に起こされ、下隣りの山村政治宅へ出向いた。「一緒にパンを食べよう」と誘われていて、食卓には目玉焼きと輪切りトマトの皿が載っていた。政治氏がバタやジャムをつけて皿に盛った食パンに手を出そうとしたとき、「ミシリ、ガタガタと来た」。「顔を見合してゐるとドカンと突き上げられ、二人共あぐらのまま飛び上がった。つづいて、横ざまに薙ぎ倒された。畳が生き物のやうに動き、部屋中の物が一度に倒れてきた。」

戸外に「抛り出さ」れた2人は梅の木に取りついた。(“曽我の梅林”は現在も観梅の名所として知られている)。

梅の木につかまって独楽(こま)のように振り回されて5分か10分かたったころやっと歩けるようになったので西側の道路に出てみると宗我神社の坂下の御影石の大鳥居が無くなっており足柄、箱根の山々に赤ハゲの山崩れがほうぼうに見えた。

回想記には手描きの略地図が添えられているが、倒壊をまぬかれたのは1軒だけで法輪寺と民家1軒が半壊、尾崎家を含む他の22軒はみな倒壊し死者が子供1名大人2名の3名、自力で動けない負傷者が5名出た。

収録されている小田原警察署の「震災調査表」には戸数340、人口2,090のの下曽我村で死者27名、負傷者480名、生死不明2名を出し、全壊戸数320、半壊15、倒れなかったのはわずかに5戸だけという惨状だった。小田原町では5,155戸のうち全壊・半壊・全焼で4,572戸、88.7パーセントの家屋が被災している。

余震は1日に356回、2日289回、3日173回、4日143回と続き15日を過ぎた頃からやっとひと桁(けた)台に落ちついてきた。

被災者は2日頃から飢えと渇きに苦しみはじめた。平成4年現在神奈川県茅ケ崎市に住み、自伝的回想記『三代を生きる』を出版した香川弥生子さんは震災当時は東京品川に住んでいた。明治44年の生まれだというから、志津さんと同年の生まれだ。

大地震の前にはさまざまな前兆現象が起きるといわれているがその日朝、母親がわざわざ弥生子さんを呼んで「あの赤い太陽はどうしたことだろう」と指さし2人で空を眺めたという。


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