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浜なつ子
2010年07月15日

42先生はチョコレートケーキを一口食べ、「君、これ、ちょっと食べてみさい」
    

   「すきとほった」食べ物/『アジア的生活』浜なつ子/講談社文庫

上掲の文章の後に、「と、シャーロック・ホームズが相棒のワトスンを諭(さと)すような口調でわたしに言った。」と続きます。

“先生とわたし”は「イギリス文学散歩」という連載ものの取材のためイギリスに来ているのです。 ちなみに“先生”は写真家で「風貌に似合わずチョコレートケーキがお好き」な方なのです。

そう言われてケーキを口に入れた“わたし”は「うわっ、これはすごい。実力としていままでで五本指の中に入りますね」

「うん、三本指の中に入れてもいい」

といっても、それほどまずかったということ。

七十日間もの滞在の間イギリス各地で食事をした“わたし”は「次第に「まずいもの」を食べるとうれしくなるという自虐的な精神が生まれるようになっ」ていました。

『イギリスはおいしい』などイギリスの生活・風物をテーマにしたエッセイで著名な“リンボー先生”こと林望さんも、イギリスの食事のまずさについては「わざわざまずくなるように」料理をしていると嘆いておられます。

さて数日後、著者と写真家は『嵐が丘』の舞台となったハワースへ向かいます。 この小説はごぞんじのようにエミリー・ブロンテの作品。 エミリーの姉シャーロットが『ジェイン・エア』の、そして妹アンが『アグネス・グレイ』の著者で3姉妹そろってイギリス文学史上に名を残しています。

『嵐が丘』の舞台となった荒涼たる原野をいい写真を撮るために7,8時間も歩いた翌日、小説の中でペニストンクラッグと名づけられた巨岩を撮影し、昼頃ハワースに戻って来て昼食のために構えの立派なレストランに入ります。 写真家が数少ないメニューの中に“スカンピ”を発見して、

「お、スカンピがある」

「スカンピって何ですか」

「川えびだよ。 イタリアのオルヴィエートで食べたスカンピの網焼きは最高だったな」

というやりとりがあり、店のマスターの「トゥディ スカンピ イズ ベリーグッド」という後押しもあって写真家はスカンピ、著者はチキンを注文します。

やがて2人の前に出されたのは同じ形の幅2.5センチ、長さ10センチの長方形のものが二つずつ。 見た瞬間それが何かがわかったのです。

「おお、ラブリー! 冷凍食品!」

さて見出しになっている「すきとほった食べ物」のこと。 この言葉の出典は宮沢賢治の『イーハトーヴォ童話 注文の多い料理店』の序文にあり、物語の何かが読者の「(心)のすきとほったほんとうのたべものになること」を願っているとしるしているのです。

著者浜なつ子さんにとっての「すきとほった」食べ物はラオスの奥地の村で食べた「カウニョオー」と呼ばれるもち米で、「高原を走る白馬の味」だったそうです。


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