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食の大正・昭和史 第八十六回
2010年08月11日

『食の大正・昭和史---志津さんのくらし80年---』 第八十六回

                              月守 晋


●「満州」そして「満鉄」

「満州国」の建国が宣言されたのは志津さんと哲二夫妻の間に第1子が生まれた1932(昭和7)年3月1日である。 3ヶ月後の6月に夫妻の長男比呂美が誕生した。

「満州(以下、「洲」は「州」と表記)」という名称は中国東北地方の限られた地域に居住していた南方ツングース系の女真(じょしん)族の呼称であり、同時に半ば遊牧生活を営んでいたこの部族の生活域をも指していた。

清朝(1616-1912)初代の太祖ヌルハチは建州女真の出身であり、その勢力圏の拡大とともに「満州」の地域もひろがり奉天・吉林(きちりん)・黒龍江の3省に及んだ。

日本帝国と軍部が清朝最後の廃帝・宣統帝を満州国の執政(32年)から皇帝に即位させたとき(34年)満州国の領域はさらに北は黒龍江(アムール川)をはさんでソビエトに、西北境はモンゴル、西南と南境は中華民国領に接する範囲にまで拡大している。

中国はもちろん「東三省を武力で侵略してたてた傀儡国家」であるとして「偽満州国(ウェイマンチュウグオ)」と呼び一貫して認めていない。

哲二が鞍山に渡った最終目的は京都市電や日本の国鉄で身につけた旋盤の技能を生かして満鉄(正式名称は「南満州鉄道株式会社」)で働くことであった。

満鉄は哲二が鞍山に渡った1934(昭和9)年の11月1日に、特急「あじあ」号を初めて走らせた。 時速83.5キロメートル、大連から新京までの701キロを8時間30分で走行した。 最高時速120キロは当時、世界最速といわれた。

流線型のスマートな車体は淡緑色に塗装され、下部に白線が1本通っていた。 客車は展望1等車(4分の1が展望室、2分の1が定員30名の座席、読書室、化粧室、荷物室を備える)、2等車(定員38名)、3等車(定員44名2両)、食堂車(定員36名)ほかに手荷物、郵便車がついた。

あじあ号の客車には全車両に冷暖房と湿度を調整する空気調節装備が備えられていた。 これも世界初と誇れる設備だった。

「満鉄」は略称で正式名称は「南満州鉄道株式会社」である。 創設は1906(明治39)年11月で哲二と同じ年に生まれた。 当初の資本金2億円のうち半額を日本政府が出資し“半官半民”の会社といわれたが実態は国策会社である。

基盤となったのは1905年、ポーツマス条約(日露戦争の講和条約。 米ニューハンプシャー州ポーツマスで調印)によって清国の承認後にロシアから得た東清鉄道(旅順―長春間)及びその支線・付属権益・特権・財産・撫順等の炭鉱経営権であった。

これ以後資本金を29(昭4)年に8億円、40(昭15)年には16億円と増強した満鉄は鉄道と鉱工業を中心に多岐にわたる産業部門の子会社・関連会社を傘下に収め“満鉄王国”と呼ばれる巨大コンツェルンに成長した。

この間、主権者である中国側が黙視していたわけではもちろんない。 1920年代には排日運動が高まり、満州の地方軍閥は満鉄の路線に並行する新鉄道線を建設して対抗した。

満鉄は新京(長春)以北の新京―ハルピン間やシベリア地方に接する満州里―綏芬河(すいふんが)間などの北満鉄路(東支鉄道)を35(昭10)年にソ連から買収、満州全土をカバーする鉄道網を完成した。

「満州国」と「満鉄」の成立前には日清戦争・日露戦争以来の長い“前史”がある。 1931(昭和6)年8月18日の満州事変はその最終幕といえるだろう。

その前史をここで詳述することはできないしその任でもない。 しかし今後の日中関係に多少でも関心のある方は両国の近現代史に多少とも目を通していただきたいと希望している。

 [参考] 『忘れえぬ満鉄』国書刊行会
      『満鉄四十年史』満鉄会/その他


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